Q&A
よくある質問
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2025.10.01
悪天候の予報で一斉休業し、本来の休日に全員出勤を命じてよいか?
Q. 通常の労働日であった日に、出社が困難になると予想されるような悪天候の予報が出ました。そのため当日を一斉休業に変更しました。
代わりに本来休日であった日に全員の出勤を命じようと考えています。休日出勤を命じることはできますか。また、休日振替とする場合等の実務上の留意点について教えてください。
【割増賃金支払いか振替休日を指定】
A. 通常の労働日に使用者が一斉休業を命じる場合には、それが「使用者の責に帰すべき事由」(労基法26条)によるときは、使用者は労働者に対して平均賃金の100分の60以上の手当を支払うことになります。ただし「使用者の責に帰すべき事由」とは、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むと解されています。
天災事変のように、①休業の原因が使用者の関与の範囲外のもので、②使用者が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であるとされる不可抗力の場合は、使用者に休業手当の支払義務はないとされています(厚生労働省「自然災害の事業運営における労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A」)。
一斉休業の原因が悪天候の予報が出たことである場合、事業場の施設・設備には何ら被害は発生しておらず、原材料の仕入れ、製品の納入等にも具体的な支障が生じているわけでもなく、上記①と②の不可抗力の要件を満たしていない場合には、休業手当の対象になるものと考えられます。最低でも休業手当を支払うなど社員に経済的な保障を行うことを前提に判断する必要があります。
そして本来休日であった日に出勤を命じ休日労働をさせるには、36協定を締結する必要があります。有効な36協定が締結されており、業務上の必要性があるときは、36協定の範囲内で休日労働を命じ得る旨が就業規則等において明確に定められている場合には、個別の同意を行っていない労働者の労働契約上も同協定の範囲内でその命令に従う義務が生じると解されています(日立製作所事件・最高裁平3 .11.28判決)。使用者は法定休日に出勤を命じた場合、35%以上の割増賃金を支払う必要があります。一方、法定休日以外の労使間で定めた休日については、休日労働を命じても労基法上の休日には該当しないため、割増賃金を支払う必要はありません。
また、業務の必要により、本来休日であった日に労働させる場合、休日を事前にほかの日に変更する方法も考えられます。
使用者による休日振替命令は、就業規則等で業務の必要により就業規則で定める休日をほかの日に振り替えることができる旨を定める規定があり、それに従って行われるか、労働者の個別の同意を得て行う必要があります。新たな休日が設定され、本来休日であった日は通常の労働日となるため休業手当や割増賃金の支払いは不要になります。
(以上)