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2021.07.01

これってパワハラ? 

【 注 意 : ”パワハラ言動をそばで見聞きして、それが原因で退職したら退職強要に当たる!” 】

Yは平成25年4月に代表取締役に着任した。当時、同社従業員30数名のうち女性従業員はL1~L4の4人(48歳~58歳)のみでした。

Y社長は、前代表取締役の交際費の支出について、L1、L2が不適切な経理処理を行ったとして、L1に対して「会社としては刑事事件にできる材料があり、訴えることもできるし、その権利を放棄していない」「L1の給与が高額に過ぎる。50歳代の社員は会社にとって有用でない」などと述べ、賞与を正当な理由なく減額。また、L2に対しても長時間にわたり批判、非難を続け、L1と同様に賞与を減額し、係長職を解く降格の懲戒処分を行いました。

 

一方、L3、L4に対しては、直接的に侮辱的な言動などはありませんでしたが、L1~L3は話し合って退職することを決めました。そんな中で、L4も一人で勤務を継続することは困難と考え、結局、4人全員が退職しました。

 

退職後、4人は、Y社長からパワハラを受けたとして、会社とY社長に対して慰謝料等の支払いと、自己都合として計算された退職金と会社都合退職として計算した退職金との差額の支払いなどを求めて提訴しました。裁判所は、Y社長のパワハラ行為がL1、L2に退職を強要する違法な行為(不法行為)であると判断するとともに、直接的には退職強要を行っていないL3、L4についても同様の認定をし、4人すべてに慰謝料や差額退職金などの支払いを命じました。

 

東京高裁の判断は、第一審同様、L3、L4は同じ職場で働く中で、L1、L2に対するY社長の言動を見聞きしており、今後、自分達にも同じような対応があると受け止めることは当然であって、いずれ退職を強いられるであろうと考え、抵抗することを諦めて退職した、としています。つまり、L1、L2への退職強要行為が、間接的にL3、L4にも退職を強いる不法行為とされたわけです。

 

もちろん、本件は個別事案の判断と考えるべきで、すべての事案にあてはまるわけではないでしょう。4人の関係性が密接であったことなど、特徴的な点もあるわけですが、従業員の関係性によっては、パワハラを直接受けた対象者”以外”の従業員についても、会社が不法行為の責任を負う可能性が示された点はとても重要だと考えられます。

 

いかがでしょうか?来年(2022年)4月からは中小企業に対してもパワハラ防止法が適用されることになっています。今から十分に留意し、対策・対応の必要がありそうですね。

(以上)

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