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2021.05.01

「働き方改革の実務」(同一労働・同一賃金)(退職金の要否)

多くの企業で整備されている退職金制度ですが、その性格は、「長期勤続に対する功労報酬」や「在職中の賃金の後払い」そして、「老後生活の補助、保障」とった様々な意味がありえます。従来、パート・アルバイトといった非正規社員は短期的な就労と考えられ、長期雇用を前提とした退職金の取扱いが問題になることはあまりなかったように思います。しかし、雇用者の4割近くを占める非正規社員の中には、無期契約のパート社員もいれば、有期雇用であっても契約更新を重ねることで長期にわたって働く契約社員もいます。この度の同一労働同一賃金の観点からは、そうした非正規社員に対する退職金の支給への対応が求められてくることになります。

 

退職金の取扱いについてガイドラインをみると、原則的な考え方の記述はありません。しかし、だからといって退職金が同一労働同一賃金制度の対象範囲に含まれないということではありません。次に裁判例ですが、不合理な労働条件の相違を禁止した旧労働契約法20条に関して退職金が争われたのは、昨年10月に最高裁の判断が示されたメトロコマース事件が初めてになりますので、この事件についてみていくことにします。

 

駅構内の売店業務に従事する正社員と契約社員との退職金をめぐる労働条件の相違が不合理として争われたメトロコマース事件は、地裁(第一審)では、前回説明した「有為人材確保論」が肯定されて、退職金不支給でも不合理ではないとされました。しかし、高裁(第二審)では、反復更新して10年以上勤務していた契約社員にも退職金の賃金後払い・功労報償的性格は及んでいるはずとして、初めて不合理の判断を示し、正社員基準の4分の1の退職金を認めました。

 

そして注目された最高裁では、下級審と同様に退職金制度は「有為人材確保論」を理由に設けられたとした上で、職務内容や職務の変更範囲について、売店業務に従事する正社員と契約社員との職務内容に一定の相違があったことは否定できないとし、退職金支給にかかる労働条件に相違があることは不合理とまではいえないと判断しました。

 

ただし、この判決には裁判官の退職金不支給は不合理とする反対意見と、補足意見が付けられています。補足意見では労使交渉を経るなどして、職務の内容等の相違の程度に応じて均衡のとれた処遇を図っていくことは、旧労働契約法20条やこれを引き継いだパート・有期労働法8条の理念に沿うものといえる、としています。

 

ですから、最高裁の判決を受けて、契約社員に退職金支給は不要と考えるのではなく、正社員とは別個の退職金制度の導入を検討したり、正社員にのみ退職金を支給する場合には、退職金の支給目的や「職務の内容」「職務の内容・配置の変更」などの違いを明確にしたりするなど、不合理と見做されないよう対応していくことが必要になりますのでご注意ください。

(以上)

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