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判例

2023.10.01

弁明の機会を与えない譴責処分は無効
~手続的相当性を欠く懲戒 慰謝料10万円を認容~

〔概要〕

本件は、社内の書類提出に非協力的で協調性を欠くとして譴責処分を受けた従業員Xが、懲戒権の濫用であるとして、会社に慰謝料等の損害賠償を求めて提訴した事件です。
東京地裁は、懲戒事由についてその経緯・背景を確認する必要があったとし、弁明の機会を経ていない当該譴責処分を無効と判断。会社に対し、慰謝料10万円の支払いを命じました。
【T社事件 東京地方裁判所(令3.9.7判決)】

 

〔解説〕

Xの譴責処分に至る経緯は次のとおりです。企業年金の確定拠出年金への移行に関して、必要書類の提出を求められたXは、関連資料の送付を求めたうえ、「この件で、私が不利益を被ることがありましたら、訴訟しますことをお伝えします」とのメッセージを担当者に送信しました。

 

会社はその翌日、Xに対し、メールを送付した趣旨を確認するといった言い分を聞くこともなく、「「訴訟」という単語による脅迫および非協力的な態度」が懲戒事由に該当するとして譴責処分を行い、始末書の提出を命じました。

 

会社は、Xが確定拠出年金への移行に関して、以前から抗議や訴訟提起の可能性に言及していたことから、Xの主張や言い分を会社として既知のものと考え、更なる弁明の機会の必要性を感じていなかったものと思われます。

 

本件は、就業規則などで弁明の機会の付与が定められているのであれば、その欠如が手続違反であることは明白ですが、そのような規定がない場合でも、本人の弁明の機会を欠くことが懲戒処分の効力に影響するか否かが注目された裁判です。

 

東京地裁は「懲戒処分に当たっては、就業規則等に手続的な規定がなくとも格別の支障がない限り当該労働者に弁明の機会を与えるべきであり、重要な手続違反があるなど手続的相当性を欠く懲戒処分は、社会通念上相当なものといえず、懲戒権を濫用したものとして無効になるものと解するのが相当である」と判示。Xの言動が、脅迫に当たるか、懲戒処分を相当とする程度に業務に非協力的で協調性を欠くものといえるかはその経緯や背景を含め、Xの言い分を聴いた上で判断すべきものとし、本件譴責処分は手続的相当性を欠くものとして無効、慰謝料10万円を認容しました。

 

これまでの裁判例では、弁明の機会の欠如を懲戒処分の効力に影響させてこなかったものが多かっただけに、これを重大な手続き的瑕疵として、懲戒処分を無効としたことは使用者には厳しい判断といえます。譴責は最も軽い懲戒処分であり、必ずしも従業員にとって具体的な不利益となるものではありません。それでも弁明の機会の付与が必要であるならば、減給や出勤停止といった他の重たい懲戒処分の場合にはなおのこと注意する必要があるといえます。従業員からは同じ言い分や主張が予想されるからといって弁明の機会を付与しないことは、軽率な判断になり得るということです。

(以上)

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