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2024.08.01
”65歳定年制を導入し、職場環境を改善”
~高齢者雇用にどう向き合うか?戦力化と生産性向上を目指す~
人手不足解消の方策の1つとして高齢者雇用が注目されています。企業の中には、シニア人材を積極的に活用し、戦力化しているところもあります。今回はいち早く65歳定年制を導入し、高齢者の働き方など職場環境の改善に取り組んでいる大手段ボールメーカーA社の事例を紹介します。
A社は2001年に再雇用制度を導入、2013年の高年齢者雇用安定法の改正に伴い、希望者全員を雇用する仕組みに改定し、以後、60歳以降も約8割の従業員が働いています。ただし、一般社員の月例給は一律18万円と6割程度に下がり、管理職は役職を外れていました。しかも段ボールメーカーは受注産業なのでユーザーの小ロット、短納期に応えるために交代勤務もあれば残業や土・日出勤もあり、60歳で退職金を受け取ると、「きついので交代勤務はしたくない」、「残業はしても土・日出勤はしたくない」という人も増えたそうです。
そのため2017年3月に「生涯現役」のスローガンを掲げ、人手不足に対応するためにモチベーション上げて生産性を高めようという目的を労働組合と共有し、協議を重ねてきました。その結果、2018年3月に具体的な制度を提案し、労働組合とも合意。2019年4月から定年を65歳に延長しました。定年延長後の処遇は基本給を下げることなく、60以降も給与・賞与を含めて59歳以前と変わらない仕組みとし、60歳以降の昇給額は多少抑制していますが、それでも努力すれば上がるようになっています。
また、「生涯現役」という定年延長の目的を踏まえて役職定年も設けていません。若手の抜擢を促すため役職定年を入れようという議論もありましたが、管理職のモチベーションを下げないことを重視しました。
一方で役職制度全体を見直しました。従来は組織の責任を持つ課長、部長などのライン長以外に担当課長、課長待遇と呼んでいる待遇職の管理職が多数いました。新たにライン長と区別するために待遇職の管理職は「担当」を頭に付けて呼称を統一。同時に、ライン長と待遇職が同じ額だった役職手当を見直し、ライン長の手当を高めに設定し、月々の手当だけでなく役職賞与でも明確に差を設けるようにしました。
また、交代勤務や残業への不安も考慮し、作業環境の改善を図りました。たとえば温度が高い工場の作業環境の省力化を推進するとともに、スポットクーラーを取り付けるなどの改善にも注力しています。さらに2018年から「働き方改革アクションプラン」を全社でスタートしました。その結果、月平均の時間外労働が60時間以上の社員ゼロや有休取得率60%超などを達成しています。
65歳定年制の導入について人事担当者は「コストアップになるので大丈夫かなという思いもありましたが、決断したことで従業員のモチベーションもアッブしています。今後は60歳以降の人たちの能力をいかに引き出し、活躍を促していくかが大きな課題です」と述べています。
(以上)