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判例
2025.08.01
ハラスメント調査結果に不服/部外者へ漏えい繰り返す
秘密保持・業務命令違反として解雇は有効に!
本件は、ハラスメントの調査結果に納得せず、親会社の役員らにメールを送った従業員を譴責処分後に普通解雇したことを不当解雇として提訴した事案です。東京地裁は担当者以外へ調査内容の通知を禁じた業務命令は有効、また、被害事実は真実性を欠くなど譴責を有効とし、経営陣の業務を妨げるとして解雇相当と判断しました。M社事件 東京地方裁判所(令6.6.27判決)
ハラスメント申告に対する社内調査結果に納得しない申告者が、調査担当者に対して再調査要求を執拗に繰り返したり、調査担当者以外の役職員(関係会社役職員を含む)に調査結果の不当性を訴える行為を行う事例も散見されます。
本件は外国人の原告が、雇用されていた被告の人事部に対し、出向先で人種・国籍を理由としたハラスメントや昇進差別を受けた旨の申告を行い調査を要求。被告は原告との間で事前に秘密保持契約書を締結したうえで調査を行い、調査結果(人種的ハラスメントや昇進差別は認められない旨等)を通知しました。しかし結果に納得しない原告が調査担当者や被告親会社CEO、被告関連会社の社員等に対するメール送信を繰り返す等したため、被告は原告に対して自宅待機を指示するとともに、調査結果について調査担当者および人事担当者以外の者には伝達しないように求める業務命令(本件業務命令)を発令しました。
しかし原告はその後も連絡行為を続けたことから、被告は秘密保持契約書および本件業務命令に違反したことを理由とする譴責処分(本件処分)を実施し、その後も原告が被告親会社CEOらに対して対応を非難する批判的メールを送信したこと等を理由に普通解雇を行いました。それに対し、原告が訴訟を提起した事案です。
判決では秘密保持契約書および業務命令の有効性について検証し、秘密保持契約書は調査内容だけではなく申告の被害事実を含むものであるとして有効と判断。業務命令については、今後の苦情申立てに関する被告の調査に支障を来し、従業員からの苦情申し立てが抑制されるおそれがあること、経営陣の本来的な業務に妨げが生じることから有効と判断しています。
懲戒処分については、「労基法3条及び公益通報者保護法の趣旨に鑑み、伝達した通報対象事実が真実であるか、真実と信じるに足りる相当な理由があり、当該行為の目的が不正の目的ではなく、手段方法が相当である場合には、違法性が阻却され、当該行為を理由とする懲戒処分は、権利濫用として無効となる(労契法15条)と解する」という判断軸を示し、本件処分については真実と信じるに足りる相当な理由や、手段方法が相当であるとは認められず有効としています。
その上で懲戒処分の対象となった行為を理由として普通解雇を行うことは二重処罰には当たらないとし、本件解雇は有効と判断しました。
(以上)