Q&A
よくある質問
Q&A
2024.03.01
前職での時間外労働は、上限規制の適用を受けるか?
Q. 中途で新しく従業員を雇用することになりました。前職では多忙だったらしく、月の時聞外・休日労働が80時間近くに達することもあったと聞いています。当社はそれほど残業時間は多くはないのですが、季節によって忙しい時期もあり、残業時間が増えることも予想されます。労働時間の上限規制において、前の会社の労働時間を加味する必要はあるのでしょうか。
A. 時間外・休日労働の36協定では、時間外・休日労働をさせることのできる限度時間を設定しますが、原則、月45時間、年間360時間までとなっています(労基法36条4項)。この限度時間を超える時間外労働時間を設定するには特別条項を設ける必要があります(同条5項)。
その場合は月45時間を超えられるのは年6ヵ月です。単月100時間未満(休日労働含む)、2~6ヵ月の各月平均80時間以下(休日労働含む)、年720時間以内(休日労働含まず)とする必要があります。これは枠であり、時間外・休日労働の実労働時間についても、単月100時間未満、2~6ヵ月の平均80時間以内(両方とも休日労働含む)としなければなりません。
さて、労働時間は、労基法38条1項により、事業場が異なる場合でも通算されますし、もちろん事業主が異なる場合も同じです。但し副業・兼業では、労基法36条4、5項の限度時間については、個々の事業場で定めた時間数は通算しません(令4.7.8「副業・兼業ガイドライン」)。また、ある事業場における労働者の実労働時間が当該事業場の限度時間の範囲内か否かについても、事業場ごとに判断されます。
一方、同条6項の労働者自身の実労働時間については、通算して考え、時間外・休日労働を単月100時間未満、複数月平均80時間以内とする必要があります。労働者個人の実労働時聞に着目し、当該個人を雇用する使用者を規制するものであるためとしています。
この実労働時間の規制について、ご質問の転職の場合はどうなるでしょうか。これも副業・兼業などと同様に規制を受けることになります。平成31年4月の「改正労働基準法に関するQ&A」によると、適用を前提に、その把握方法に関して「転職の場合についても自社以外の事業場における労働時間の実績は、労働者からの自己申告により把握することが考えられます」との回答を掲載しています。そのため少なくとも半年間は前職の実労働時間の影響を受け、複数月平均80時間以下に抵触しないように労働時間管理を行う必要があるでしょう。
なお、特別条項における年6ヵ月に関しては、転職前の労働時間を通算しないといえます。ここは労基法36条5項に含まれ、枠の設定に関するものだからです。同一企業内で転勤した場合も同様の考え方をとります。
(以上)