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2021.11.01

長時間労働の結果「疾病発症なし」でも使用者に慰謝料支払責任を認定!

K社製麺工場の元従業員(平成24年5月頃に入社)は、ミキサーに小麦粉を投入する作業に従事。平成27年6月から平成29年6月に退職するまでの約2年間、ほぼ毎月100時間を超える時間外労働(2カ月は90時間以上、7カ月は150時間以上、その余は100時間以上)を行っていました。退職する10日前に医療機関で肺の機能の一部が悪くなっていると診断されたものの、じん肺などではなく、小麦粉の投入作業が原因とは断定できないとされた。また、会社はこの間、適法な三六協定の締結をしておらず、タイムカードの打刻時刻から窺われる元従業員の勤務状況について注意を払い、改善指導することも無かった。

 

これまで損害賠償を認めた裁判例の多くは、過労死ライン程度以上の過重労働の結果として、脳・心臓疾患や自殺を含む精神障害等が発生したことに対するものであった。これに対し、本判決は、『業務に起因する具体的疾病の発症事実が認定されない場合』でも、使用者の損害賠償責任を認定した点で注目すべき裁判例といえる。

 

裁判所は「結果的に(元従業員)が具体的な疾患を発症するに至らなかったとしても、会社は安全配慮義務を怠り、2年余にわたり、(元従業員)を心身の不調をきたす危険があるような長時間労働に従事させたのであるから、(元従業員)の人格的利益を侵害したものといえる」として、その「精神的苦痛に対する慰謝料は30万円をもって相当と認める」と判示した。

 

侵害されたとするここでの人格的利益とは、安全や健康に配慮された職場環境下で働く利益のようなものと考えられるが、本件ではそれが使用者の安全配慮義務違反によって侵害され、心身の健康が危険にさらされたこと自体が損害であり、その損害賠償を認めたものといえる。

 

ただ、本件の場合、適法な三六協定が締結されていなかったり、割増賃金を支払っていなかったりするなど、使用者の悪質性を不法行為成立の要件としているのかどうか判然としないところがある。しかし、具体的な疾病の発症がなくとも、安全配慮義務違反となる長時間労働させた事実のみで不法行為が認められ、損害賠償責任が生じる可能性があることを考えれば、今一度、従業員の労働時間管理の徹底を行うことが訴訟リスク回避のために重要であると考えられる。【K社事件 長崎地裁大村支部(令元・9・26)】

(以上)

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